豊洲新市場で行われる予定だった2017年の初競りは、築地市場で行われ、青森県大間町で水揚げされたクロマグロが7,420万円(@35万円/㎏)で競り落とされました。
落札業者は、2013年に1億5,540万円で競り落とした「すしざんまい」運営の喜代村さんです。
このマグロを釣り上げたのは、大間漁協所属のはえ縄漁船、第五十六新栄丸の竹内さんです。地元でも屈指の水揚げを誇る同漁船が、2017年の最高値のマグロを出荷しました。
過去最高値の約半値ではあるもののマグロ1匹に7,000万円と聞くと、非常に高い気がします。しかし、世界中から築地にくる観光客が、初セリの話題をする広告宣伝費を加味すると、非常に上手な企業戦略だと感心しますね。
さて、漁業者の側からみると、どうでしょう。
マグロの年平均価格は、大間町で平均6,222円/㎏、青森県で平均2,742円/㎏(2014年青森県統計)です。2017年の初競りのマグロ35万円/kg、2013年の最高値のマグロは70万円/kgにもなります。初セリのマグロを1匹釣り上げれば、100匹の価値があるので、非常に魅力的ではありますが、海が多少荒れていても、出漁してしまう危険性もはらんでいます。海難事故が起き、漁師が行方不明などになると、所属漁協の漁船がすべて操業を休止し、人命救助にあたります。それが長い時ですと1週間にも及びます。極寒の冬の海に落ちれば、数時間も持たないでしょう。状況判断で海上保安庁から死亡認定が出る場合もありますが、これが状況的に難しい場合は、残された家族が失踪届を出す必要があり、届け出から死亡認定されるまで7年間も待たなければなりません。つまり、その間残された家族が生命保険や漁船保険等を払い続ける必要があるのです。
初セリのマグロの価格は、夢があっていいという人も多い中、漁師泣かせだという方もいます。自ら選んで漁師になったのだから、しょうがないだろうと言う方もいるかもしれません。
何のために仕事をしてお金を稼ぐのか、仕事をするために死んでは本末転倒です。生きるために仕事をして、その対価としてお金を稼ぐのですから。矢印が逆転してしまうと、よくないと思います。
マグロに限らず、我々が普段食べているものは、それを作る人、獲る人がいて成り立っています。それを毎日意識して食事をすることは難しいですが、たまに思い出していただければ生産者としても非常に喜ばしいことです。